新技術を実用化するプロセスにおいて、PoCは重要な役割を果たします。PoCは新たに開発された技術がビジネスとして有用かどうか検証するのに役立ちます。しかし、どのように検証を進めればよいのかわからない人もいるのではないでしょうか?
そこでこの記事では、PoCの概要や具体例、実施のメリットなどを詳しく解説します。PoCの実施を検討しているものの、どのように進めていけばよいのかわからない人は要チェックです。やり方を詳しく学ぶことで、自社にマッチしたPoCの実施方法がわかるようになるでしょう。
目次
PoC(Proof of Concept)とは?
ビジネスでPoCを実施するメリット
ー導入後のイメージを具体化できる
ー実現可能性を判断できる
ーコストパフォーマンスを検証できる
ー意思決定の参考資料になる
ー開発工数を削減できる
ーゴールを明確化できる
PoCを効果的に実施するプロセス
ー手順1: 実施目的を明確に掲げる
ー手順2: 検証方法を定める
ー手順3: システムを設計・開発する
ー手順4: デモンストレーションを実行する
ー手順5: 得られたデータを検証する
ー手順6: プロジェクトを本格的にスタートする
PoCを効果的なものにするためのポイント
ー想定される運用環境に近い状況で検証する
ー実施規模を拡大しすぎないように注意する
ー目的を逸脱しない
知っておきたいPoCのリスク
PoCの活用例を紹介
ー自動運転の実証実験
ー工事現場の安全確保システムの実証実験
ースマート農業の実現可能性を調べる実証実験
PoCをうまく活用すればビジネスの実現可能性が明らかに
PoC(Proof of Concept)とは?
PoC(Proof of Concept)をわかりやすく説明すると、「新技術の活用が現実的なものかどうかを判断するための実験」です。新たなサービスを開発したときに、商用サービスとして提供できるのか判断したりコストに問題ないのか検証したりするのに役立ちます。
PoCを実施することで、新技術や新サービスを開発した段階では表面化していなかった問題が発覚することもあるでしょう。本格導入する前に検証しておくことで、リリース前に致命的な問題が発生して大きな損失が発生したり、開発中に大きなハードルが発覚して計画が頓挫したりすることを防げます。
ビジネスでPoCを実施するメリット
ビジネスにおいてPoCを実施することには、さまざまなメリットがあります。主なメリットを挙げると以下の通りです。
- 導入後のイメージを具体化できる
- 実現可能性を判断できる
- コストパフォーマンスを検証できる
- 意思決定の参考資料になる
- 開発工数を削減できる
- ゴールを明確化できる
ここでは、それぞれのメリットについて紹介します。PoCが本当に必要なのかわからず悩んでいる人や、どのような効果が期待できるのか知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
導入後のイメージを具体化できる
プロダクトを開発するのにどの程度のコストがかかるのか、ビジネスとして問題なくリリースできるのかを検証するのがPoCの役割です。
PoCを実施すると、本開発をはじめる前に導入後のイメージを具現化できます。小規模でプロダクト開発を進め、必要に応じてモニターを募集して使用感をチェックしてもらいます。プロダクトの種類によって具体的な進め方は異なりますが、いずれの場合でも実際に導入したときにどの程度のコストがかかるのか、市場のニーズを満たせるのかなどを判断するのに必要なデータを得られるでしょう。
またPoCは、致命的なトラブルにつながる可能性がある不具合を可視化するためにも役立ちます。
実現可能性を判断できる
PoCは「概念実証」とも呼ばれており、「本開発後にプロダクトをリリースできるか」「売上を見込めるのか」を判断するためにも欠かせません。
検証を進めていくうちに技術上の限界により予想したものを開発できないことが判明したり、市場のニーズにマッチしないことがわかったりすることがあるでしょう。技術面の欠陥で、きちんと動作しないこともありえます。
PoCを実施することでこれらの要素が明らかになり、実現可能性を正しく判断できるのは大きなメリットです。現時点で実現できる可能性が低いと判断した場合は、その時点で開発を中止すれば損失を最小限に抑えられます。
コストパフォーマンスを検証できる
新たなプロダクトをリリースするときは、コスト面も大きな問題になります。新たなプロダクトが魅力的なものであっても、販売価格と得られるリターンが見合っていないために市場から受け入れられないこともあるでしょう。
事前に小規模なプロトタイプを開発して具体的な効果を検証することで、かかりそうなコストをあらかじめ見積もって問題ないか判断するのに役立ちます。開発予算をどこに重点的に配分するかを判断したり、どの程度の価格で提供すれば必要な利益を得られるのか計算したりするのに活用できるでしょう。
PoCを実施していないと、本開発を進めてから予想以上にコストがかかることが判明するケースもあります。
意思決定の参考資料になる
PoCでは小規模な環境でプロダクトを開発して検証するため、ビジネスとして効果があるのかを可視化できます。PoCをしないと効果をイメージするだけに過ぎなかったものが、PoCを実施することで具体的な工数や効果を可視化できるため、その後の意思決定を左右する材料になるでしょう。
このまま本開発を進めるのか、開発を中止するのか、仕様を変更するのかで悩んだときは、検証によって得られたさまざまなデータにもとづいて適切に判断できます。
開発工数を削減できる
本開発への移行前に一通り確かめておくことで、予期しないトラブルが発生する可能性を減らせます。実際の開発にどのような工程が必要になるのかも明らかになるため、プロジェクトが始まってから予想以上に工数が増えることも防げます。
プロジェクト始動後に細かくテストする必要もないため、テストフェーズも大きく削減できるでしょう。事前にPoCを実施することで、開発工程において手間やコストがかかるフェーズを削減できるのは大きなメリットです。
ゴールを明確化できる
PoCで実現可能性を考慮しつつ具体的な検証を進めることで、設定すべきゴールを明確化できます。想定していたサービスのうち、現時点で実現できそうなものはどこまでかを明確にすることで、途中で方向性が変わることを防げるでしょう。
事前に目指すべき方向性を明確化することは、リソースを重点的に配分するところを明らかにして、開発にかかる手間やコストを最適化することにもつながります。
PoCを効果的に実施するプロセス
PoCは重要な検証作業ですが、効果的に実施するには正しいプロセスを押さえておくことが大切です。PoCを実施するときは、以下のプロセスにしたがって行うとよいでしょう。
- 実施目的を明確に掲げる
- 検証方法を定める
- システムを設計・開発する
- デモンストレーションを実行する
- 得られたデータを検証する
- プロジェクトを本格的にスタートする
ここでは、それぞれのプロセスについて解説します。初めて取り組むなどで、どのように進めればよいのかイメージできていない場合は、以下の手順を一通りチェックしておくとよいでしょう。
手順1: 実施目的を明確に掲げる
まずは実施目的を明確化することが大切です。プロダクトが目指すものを考慮し、PoCで何を検証するのかを定めましょう。実施目的の具体例には以下のようなものがあります。
- 新プロダクトがビジネスとして実用的か検証する
- 新たな技術やシステムを業務効率化に役立てる
- プロダクトにどのような機能を盛り込むのか決める
実施目的を明確化することで、何を重点的に検証すればよいのかが明らかになります。目的が定まったら次の段階に移行しましょう。
手順2: 検証方法を定める
PoCの実施目的が明確になったら、次に何を検証すればよいのかを考えましょう。検証内容によって必要なデータやモニターを選定するときの基準、具体的な検証方法が明らかになります。
新たに市場に販売するためのプロダクトを開発するのであれば、実現可能性やコストを検証しなければなりません。対象ユーザーを具体的に設定してからプロトタイプを開発し、モニターに提供してフィードバックを収集するのが有効です。
目的に応じて検証方法を定め、次の段階の設計・開発に移行しましょう。
手順3: システムを設計・開発する
PoCの目的と検証すべき内容が決まったら、実際にプロトタイプを設計・開発します。PoCに必要なプロトタイプを開発するときは、以下のように行うのがオススメです。
- プロダクトとして求められる必要最低限機能を決める
- 必要最低限の機能を実装したプロトタイプを開発する
- 問題ないことが明らかになったら、必要な機能を追加実装する
- 追加実装後に正常に動作することを確認する
プロトタイプが完成し、この時点で問題が発生していないのであれば次のデモンストレーションに進みます。
手順4: デモンストレーションを実行する
プロトタイプが完成したら、本格導入後に使用するユーザーの一部をモニターに選定してデモンストレーションを実行しましょう。目的は実際に使用してもらい、フィードバックを収集することです。
モニターの選定基準に問題があると、有用なデータが得られません。社外に販売する製品であればターゲットとする顧客層のユーザーを、社内で利用する製品であれば社員をモニターにするなど、実際的なデータを得られる環境で実施することが大切です。
手順5: 得られたデータを検証する
デモンストレーションを実施すると、さまざまなデータを得られます。モニターのフィードバックを分析することで、好評なポイントと改善すべきポイントが明らかになるでしょう。製品そのものがユーザーに受け入れられそうかも判断できます。
そのため、得られたデータを細かく分析して本格的に開発する際の参考にしましょう。不満が多い部分を改良してユーザーの満足度を高めれば、市場から支持されるプロダクトになります。
手順6: プロジェクトを本格的にスタートする
PoCによって得られたデータにもとづき、開発の方向性を定めたらプロジェクトを本格的にスタートさせます。PoCを実施したことにより、スタート時点では何を目指してどのように開発を進めればよいのかが明確になっているでしょう。
PoCの結果をふまえて要件定義し、具体的な設計を決めると効果的です。実際の開発作業も何をどのように進めればよいのかが明確になっており、スムーズに進みます。
PoCを効果的なものにするためのポイント
PoCを実際的かつ効果が高いものにするには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。そこで、ここではPoCを効果的なものにする上で欠かせない3つのポイントを紹介します。
- 想定される運用環境に近い状況で検証する
- 実施規模を拡大しすぎないように注意する
- 目的を逸脱しない
せっかく実施したPoCが非現実的なものになることを防ぐためにも、これらの要素を常に意識するのがオススメです。
想定される運用環境に近い状況で検証する
PoCの実施目的は「本導入後の効果検証」です。そのため、想定される運用環境に近い状況で検証しなければ意味がありません。一例として、市販するシステムのPoCを行うときにモニターを自社社員から選んでも、環境が異なるため効果に期待できないでしょう。
市販するシステムであれば、ターゲットとして想定している顧客層の中からモニターを選ぶと効果的です。営業職向けのシステムを開発しているのであれば、営業スタッフに検証作業に参加してもらうとよいでしょう。
いずれの場合でも、実際の運用環境に近い状況で検証することが大切です。
実施規模を拡大しすぎないように注意する
PoCとは手間やコストを削減しつつ、効果を簡単に検証するのが目的です。そのため、小規模な環境で実施して必要以上に規模を拡大しないのが効果的に行うコツといえるでしょう。
実施規模を拡大するとより効果的なデータを収集できますが、手間やコストがかさんで「手間やコストの削減」という目的が果たせなくなります。したがって、効果を検証する目的を果たすのに適正な規模で行い、大きくしすぎないように注意してください。
目的を逸脱しない
PoCを実施して検証を重ねている間に当初の目的から逸脱するケースがあります。目的を逸脱すると本来の検証効果を得られず、プロダクトをリリースしてから困ることにもつながりかねません。
一例として、「AIを活用したIoTデバイスの制御システム開発」を実現できるのかを検証していたのにもかかわらず、目的がいつのまにか「AIを搭載したIoTデバイスの開発」になっているケースを考えましょう。こうなると個々のIoTデバイスの開発がメインになってしまい、制御システムの開発という当初の目的が果たせなくなってしまいます。
そのため、PoCを実施している間は常に当初の目的から逸脱していないかをチェックしましょう。逸脱していることに気づいたら、軌道修正して本来の目的を果たせるように調整することが大切です。
知っておきたいPoCのリスク
PoC を実施することには、いくつかのリスクがあります。
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時間と資金の無駄遣い: PoC を実施することには、時間と資金がかかるため、そのアイデアや技術が有効であることが確認できなかった場合、投資が無駄になる可能性があります。
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パフォーマンスの問題: PoC で作成されるデモやプロトタイプは、通常、小規模であるため、実際にそのアイデアや技術が、大規模で使用される場合にどのようにパフォーマンスが変化するかを検証することができません。そのため、PoC では、実際にそのアイデアや技術が、大規模で使用される場合において、期待したパフォーマンスを発揮するかどうかを検証することができません。
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技術的な問題: PoC を実施することで、そのアイデアや技術に関する技術的な問題が発見される可能性があります。そのため、PoC を実施することで、そのアイデアや技術が、実際に使用される場合において、期待した結果を生み出すことができない可能性があることが示されるかもしれません。
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プライバシーやセキュリティーの問題: PoC を実施することで、プライバシーやセキュリティーに関する問題が発生する可能性があります。そのため、PoC を実施する前に、プライバシーやセキュリティーに対する対策がしっかりと行われる必要があります。
PoCの活用例を紹介
PoCは新技術をさまざまな場面で活用するために行われています。今回はそれらの中から以下の3つをピックアップしてチェックしましょう。
- 自動運転の実証実験
- 工事現場の安全確保システムの実証実験
- スマート農業の実現可能性を調べる実証実験
それぞれどのようにPoCを活用しているのかを紹介します。自社のビジネスに応用できそうな分野があれば、ぜひ参考にしてみてください。
自動運転の実証実験
自動車の自動運転はAIを活用した新たなシステムとして期待されています。自動運転はAIカメラの技術や動力・ステアリングの制御システムなど、さまざまな分野が複合的に絡み合ったシステムです。
自動運転を実現するのに必要なAIカメラを開発したり、安全性を検証したりするには繰り返しさまざまな検証を行わなければなりません。これを大規模に行うと手間やコストがかかるため、エリアや時間を区切って実験するPoCが行われています。
これによって自動運転の実現可能性や必要な技術レベルが明らかになり、得られたデータはその後の研究・開発に活用されています。
工事現場の安全確保システムの実証実験
工事現場の安全を確保するためのシステムを開発するプロセスにおいて、PoCが活用された例も存在します。このシステムは、工事現場で稼働している重機やスタッフにカメラやセンサーを取り付け、得られたデータを5G通信網経由でシステムに転送する仕組みです。
システム側には検知システムや遠隔操作システム、測定システムが設置されており、得られたデータにもとづいて適切に制御することで現場の安全性を高めます。
こちらも運用段階でさまざまな課題が発生すると予想され、その都度対処が必要です。PoCで検証を重ねることは、効率的に実用的なシステムを設計・開発するのに役立ちます。
スマート農業の実現可能性を調べる実証実験
農業分野でもAIやICT技術を活用する動きが広まっています。これを「スマート農業」と呼び、人手不足の解消や生産の効率化を実現する技術として期待されている分野です。
農林水産省では、2019年から全国各地でスマート農業が現実的かどうかを探るPoCを実施しています。(農林水産省 スマート農業実証プロジェクト)
スマート農業化を加速するためには検証の繰り返しが欠かせないため、限られた範囲で効果的に検証できるPoCが活用されているといえるでしょう。
PoCをうまく活用すればビジネスの実現可能性が明らかに
PoCは考えたアイディアやビジネスプランが実現できるのか、なんらかの問題が隠されていないか検証するのに役立ちます。2022年時点ではAIやIoTの活用方法を探るために多用されており、欠かせない技術です。
AIをはじめとした最新技術をビジネスに活用したいと考えている企業にとっては、実現可能性を明らかにして効率的に開発を進めるためにもPoCが欠かせないものになるでしょう。
SCORERでは、AIを活用したさまざまなソリューションを提供しています。AIをビジネスに活用したいと考えている人は、ぜひこの機会に一度お問い合わせください。
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