従来の動画解析・画像解析は、手間や処理時間がかかるという問題がありました。それを解決したのが、近年注目を浴びているディープラーニングを活用したAI動画解析です。ここでは、高精度の動画解析を可能にする先進の動画解析の仕組みと特徴のほか、AI動画解析を活用した事例を解説します。
目次
- 動画解析とは、映像に映る物を認識・識別する技術
- 動画解析の仕組み
- 機械学習とディープラーニングの違い
- 動画解析のメリット
- 動画解析の注意点
- 動画解析の活用事例
- さまざまなニーズに対応可能な動画解析AIプラットフォーム「SCORER」
動画解析とは、映像に映る物を認識・識別する技術
動画解析とは、カメラなどで撮影した映像をコンピューターで処理し認識・識別する技術のこと。映像解析とも呼ばれ、動画に映った情報から特定の被写体を抽出したり、動きや位置などを識別したりすることが可能です。施設内の監視カメラや製造の現場、交通情報分析など、さまざまな場所で活用されています。
近年では、高解像度のカメラの普及や精度の高い解析技術の進化により、効率的かつ安価に動画解析を活用できるようになりました。労働力不足の解消や業務効率化のため、AI動画解析を導入する企業も増えています。
動画解析の仕組み
私たちが普段目にしている動画は、静止画である画像を連続再生したものです。動画解析とは、画像解析の繰り返し、つまり、画像に写った物をさまざまな手法で認識し、識別することを繰り返す仕組みといえます。ここでは、画像解析における手法とはどのようなものかをご紹介します。
画像分類
画像分類とは、わかりやすくいえば「何の画像か」を認識し、分類することです。例えば、動物を写した画像なら、写っている動物が猫なのか、犬なのか、うさぎなのか、カテゴリに分類します。画像分類では、写っている物の位置や数まではわかりません。
物体検出
物体検出とは、画像に写っている物とその位置、種類、数を検出することです。検出したい物をあらかじめ設定しておくことで、多くの画像の中から該当する物だけを抽出することができます。人物を検出したい場合、たとえ複数人が写っていても、服装や性別、おおよその年齢など、それぞれの特徴を検出して、「人-1」「人-2」…という具合に識別します。
画像生成
画像生成は、あらかじめ入力したデータに近い特徴を持つ画像データを、新たに生成すること。アパレル業界での「バーチャル試着」が実用的な例の典型です。この仕組みでは、本人の画像に製品の画像を加えて新たな画像を生成することで、店舗に出掛けなくても試着した姿を見ることができます。
セグメンテーション
セグメンテーションは、画像に写った物を検出・認識し、その物体と周囲あるいは背景との境界線をピクセルレベルで区分けして、抽出することです。会議室内の画像からホワイトボードを検出したり、机の上を撮った画像から書類だけを検出したりする際に用いられます。
文字認識
文字認識とは、画像の中から文字を認識する技術で、OCR(光学文字認識)と呼ばれます。前項のセグメンテーションと組み合わせれば、ホワイトボードやブロジェクター画面の画像から文字を検出、さらに個々の文字を認識して、テキストデータに変換することができます。
スマートフォンのカメラに備えられた翻訳機能には、この文字認識技術が使われています。
顔認識
顔認識は、画像の中から人の顔を検出し、認識する技術です。まず、画像の中にある人の顔を認識し、さらにセグメンテーションによって目・鼻・口などのパーツの形や位置関係を割り出します。それをあらかじめ登録されたデータベースと照合して、個人を特定するのが顔認証で、顔認識技術のひとつです。
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機械学習とディープラーニングの違い
AIを活用した画像解析技術の仕組みでは、機械学習やディープラーニングという言葉がよく使われます。この2つの言葉は混用されることも多いようですので、これらの違いについて詳しく見ていきましょう。
機械学習:データをもとに機械が学習し、ルールやパターンを発見する技術
機械学習とは、コンピューターが膨大な量のデータをもとに学習し、ルールやパターンを発見する解析技術のこと。例えば、多種多様な特徴を持つ自動車の画像を大量に読み込ませることで、コンピューターがそれぞれの画像の特徴やパターンを記憶し、画像情報から自動車を判別できるようにするといった方法です。同様の方法で人を認識できるようになれば、コンピューターは「人と自動車」を識別できるようになります。
機械学習の場合、事前に人の手で識別の基準となるパターンやルールを指定する必要があります。リンゴを認識させたい場合、形や色などの特徴を指定しておくことで、赤いリンゴも青いリンゴも、共にリンゴとして認識できるようになるのです。
ディープラーニング:機械学習のひとつで、機械が人の手を借りず学習する技術
これまで人の手で指定していた識別の基準を自動的に学習できるのが、ディープラーニングです。「深層学習」とも呼ばれ、人の脳のような働きをする機械学習の技術です。
ディープラーニングでは、どの基準で学習すればいいかをコンピューター自身が判断します。例えば、膨大な数のリンゴの画像を読み込んでいくうちに、コンピューターは「形だけでなく、色もリンゴの特徴のひとつだ」と判断し、正確な分類が行えるようになるのです。
ディープラーニングには、人の作業負荷が軽く、従来の機械学習よりも高精度な結果を得やすいというメリットがあります。特に画像領域では、ディープラーニングの登場により飛躍的に活用の場が広がっています。
動画解析のメリット
動画解析はすでに多くの分野で活用されていますが、導入によってどのようなメリットが得られるのでしょうか。動画解析の主なメリットをご紹介します。
労働環境の改善
動画解析を活用すれば、目視や手作業で行っていた作業を自動化することができます。
例えば、製造ライン上での検品作業は、瞬時の判断が必要で「誰でもすぐにできる作業ではない」という点から、属人性が強い傾向があります。動画解析を導入すれば、労働環境の改善に大きく貢献できますし、人材不足も解消できます。
人的コストの削減・最適化
動画解析を導入することで、人員・時間などのリソースを削減できます。
例えば、小売店舗での来店客の動きを解析することで、余剰な人員配置を最適化し、人的コストの削減を図れます。また、製造現場や流通倉庫などでは、従業員の動線を解析することで、業務の最適化と生産性の向上を狙うことも可能です。
作業精度の向上
動画解析であれば、ヒューマンエラーの防止や作業精度の向上が期待できます。
人によるチェックで防ぎきれないのは、見落としや勘違いなどヒューマンエラー。動画解析であれば、長時間にわたる作業であっても疲労や集中力の低下によるミスがないため、作業精度の向上を図ることができます。
動画解析の注意点
多くのメリットが期待できる動画解析ですが、同時に注意すべき点も持ち合わせています。動画解析の導入を決める前に、下記の点について十分に検討しておくことが大切です。
コストがかかる
カメラとPC、システム一式に加えて、解析結果の出力や制御を行う場合は別途コストがかかります。動画解析システム単体としてのコストだけではなく、他システムとの連携や維持管理コストも含めて考えておく必要があります。AIの運用経験がない企業の場合は、システム会社に相談しながら進めるといいでしょう。
解析精度が完璧でない場合がある
求める結果によっては、満足の行く精度が得られない場合があります。特に画質は、解析精度に大きく影響します。この点については、導入の目的を明確にした上で、システム会社と十分な打ち合わせを重ね、どの程度の画質が必要か、事前にすり合わせて確認しておくといいでしょう。
動画解析の活用事例
動画解析はさまざまな分野、多くの業界で活用されています。続いては、その一例をご紹介しましょう。
入退室管理
入り口のカメラで顔認証を行い、入退室を記録します。部外者の立ち入り制限を設けたり、権限レベルによって入室を制限したりすることができます。ほかのシステムと組み合わせ、勤怠管理に応用することも可能です。
製造ラインの検品
ライン上の製品、あるいは製造途中のワークを撮影し、OKかNGかを判断します。人の目に頼る以上に安定かつ正確に検品でき、属人性を排除することにもつながります。
各種制御システムと連携すれば、NG品をラインから排除するなど、自動化も可能です。
倉庫内の在庫管理
倉庫内のカメラで棚を撮影し、そこからどのアイテムが何個残っているかを記録します。入庫・出庫による変動も記録すれば、常に正確な在庫が把握できます。
また、遠隔確認が可能ですから、倉庫に入ることなく在庫確認ができます。
建設現場の危険察知
工場や建設現場などで、起こりうる危険をあらかじめ想定してシステムに読み込ませておきます。さらに、墜落や崩落などのアクシデントの危険がある領域を危険領域に設定しておくと、動画解析によって事前に危険を察知し、警報を発することも可能です。
農作物の育成管理
水田や畑全体、果樹の状態を撮影した動画を解析し、育成状態の管理に活用します。作物の成長の具合や虫害、病害などを素早く検知し、肥料や農薬散布などの適切な対応ができます。
店舗運営
小売店などの店舗内と人の流れをカメラで撮影し、動画解析を行います。来店客の動線や滞留時間、手に取った商品などを分析することで、商品配置を整理したり、最適な人員配置を行ったりすることが可能です。また、スタッフの動線を分析し、無駄や無理の解消につなげることもできます。
さまざまなニーズに対応可能な動画解析AIプラットフォーム「SCORER」
最後に、動画解析の導入を検討中の方におすすめの動画解析AIプラットフォーム「SCORER(スコアラー)」についてご説明します。
「SCORER」は、カメラを設置できる場所であればどこにでも導入でき、24時間・365日、リアルタイムでのAI動画解析が可能です。豊富な事例とプラットフォームが持つ柔軟性により、実際に検証を行って確認する「PoC」が不要。これは、最大70%減というコストカット効果にもつながっています。
また、30種類以上のAIアルゴリズムを利用できるため、さまざまなニーズに柔軟に対応できます。多くの実績にもとづいたサポート体制と、必要に応じてコンサルティングサービスも用意していますので、AI運用が未経験の方であっても安心です。
動画解析の技術は日々進化しており、今後もあらゆるビジネスでの活用が見込まれ注目されている分野です。客観的な動画解析データから、これまで認識できなかった法則や気づきが得られ、新たなビジネスチャンスにつなげることも期待できます。AI動画解析で課題解決を図ろうとお考えの方は、ぜひ一度フューチャースタンダードにご相談ください。
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