次世代の通信システムとして注目を集めている5G。通信キャリアであるソフトバンク株式会社では、可搬型5G設備「おでかけ5G」や、技術検証ができるトライアル環境「5G×IoT Studio」など、5Gに関する様々な取り組みを実践されています。
昨年、「5G×IoT Studio」で実施され話題を呼んだのが、カメラの映像から人の姿勢や位置情報、年齢や性別を読み取り、リアルタイムにデータ化して分析する「リアルタイム動線分析」。この取り組みのベースに「SCORER」が活用されています。SCORERを採用いただいた理由や、どんな点を評価していただいているのかについて、ソフトバンク株式会社・先端技術開発本部の山田大輔 様、大竹博 様にお話を伺いました。
「複数カメラの映像を統合し解析する」という発想は他社よりも一歩進んだものだった
ーまずはお二人の業務について教えてください。
山田:私と大竹は同じ先端技術開発本部に所属しています。業務内容をざっくりいうと、技術目線から事業をつくっていくという仕事です。新しい技術やおもしろい技術を見つけたら、ネットワークと組み合わせて何ができるのかを考えるのです。
ー昨今のトレンドは何でしょうか。
山田:やはり5Gですね。幅広い業界向けに、5Gの使い方などを紹介する「5G×IoT Studio」を昨年立ち上げました。
大竹:他にも先端技術開発本部では、HAPSモバイルというどこででもインターネットに接続できる環境を空から作り上げる事業・技術開発を行っていたり、トヨタ様との共同出資で立ち上げたMONET Technologiesなど、いろいろなことをやっています。他から見ると変な部署だと思います(笑)。
ーそんな先端技術開発本部のお二人と当社で、昨年SCORERを使った取り組みをさせていただきました。どんなところに魅力を感じていただいたのでしょうか。
山田:フューチャースタンダードさんは2年ほど前に同じ部署のメンバーから紹介してもらったのですが、映像解析の事例が面白いなと思いました。複数のカメラの映像を統合したり、そこにAIでの映像解析を本格導入するというフューチャースタンダードさんの提案は当時、他であまり見ないものだったんです。
大竹:そうですね。5Gというと映像がきれいに見えるとか、VRに使えるとか、どちらかといえばエンタメ要素が強かった時期でした。そんな中、映像を解析してビジネスにつなげるというフューチャースタンダードさんの発想は一歩進んでいたと思います。
5G×SCORERの取り組みを3回実施、三菱地所の防災訓練にも採用
ーありがとうございます。昨年、SCORERを活用した取り組みを3回やらせていただきました。
山田:1回目はまさに先ほど話に出た、複数カメラの映像を統合する映像解析と、それを活用した動線追跡でしたね。
2回目はそこに属性認識を加えて、カメラに映っている人の年代や性別を判別を行い、小売店などでお客さんの動きを追跡し、属性に合わせた陳列や広告表示に生かすことができるという取り組み。そして3回目は三菱地所様と共同で、当社の可搬型5G設備「おでかけ5G」とSCORERを防災訓練に活用するというものでした。
ー5Gを活用した防災訓練は日本でも初めての試みだったそうですね。
山田:ええ。三菱地所様は多くのビルを所有されており、災害が起こるとそれらを避難所として開放することにされています。ただ、カメラは設置されているのですが、避難所だけでもかなりの数があるので、モニタールームでの人の目による常時監視は困難です。そこでSCORERを活用して映像を解析し、どんな人が何人避難所にいて、今どういう状況なのかを可視化するわけです。
ー5GとAI映像解析で具体的に何ができるのかがわかりやすく見えた事例ですね。
山田:その点はまだまだ課題ですね。5Gを知らない人もたくさんいますし、ご相談いただいても、それが実は5Gでなくても解決できることだったりします。
技術力だけでなく、フットワークが軽くスピード感がある
ー今後はより事例をつくっていくことが求められそうですね。そうした昨年の取り組みを通して、フューチャースタンダードやSCORERの印象はいかがでしたか。
大竹:フューチャースタンダードさんについては、技術力はもちろん、フットワークが軽くスピード感もあるという印象です。我々の部署はソフトバンク社内でもかなりスピード感があり、とにかく動きが速いのです。それについてきていただけるパートナーさんはそう多くありません。
当時は我々もAIに関する知識がまだまだ不足しており、フューチャースタンダードさんにはいろいろとアイデアを出して助けていただきました。それを現場で落とし込む技術力も持たれています。おかげさまでしっかり期日にも間に合わせることができました。
ー具体的にはどんな技術やアイデアが生まれたのでしょう。
大竹:たとえば、4つのカメラで人の骨格を類推し、骨格の座標をトレースして動線を可視化するという取り組みを行ったのですが、その場合に複数カメラで撮影するため重なっている部分が出てきます。データとしてには二重になるわけですが、映っている人は一人ですから、その二重のデータを同一人物だと認識できないといけないわけです。
その点をご相談させていただいたところ、ソフトウェア側のアルゴリズムを変えることでチューニングしていただいたり、カメラで映す範囲でコントロールしたりと、まさに目の前で改善していく様子を見せていただいたのは興味深かったですね。短期間できちんと結果を出していただくことができました。
ー今後の展開についても教えていただけますか。
山田:僕たちのチームとしては、エッジコンピューティングをやっていきたいと思っています。カメラの映像解析自体は、今はもう簡単にできる時代ですが、複数のカメラを統合したり、映像化した後のデータを解析する技術力に関してフューチャースタンダードさんは秀でておられますから、ぜひお力添えをいただきたいですね。